湯活のススメ

温泉・銭湯・サウナ・岩盤浴等の温浴施設の楽しみ方

温泉分析書マスターが教える提供側、入浴側双方から見た由緒正しい温泉入浴法について

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さて、温泉分析書マスターも取得したところで、リゾートホテル支配人時代に温泉営業許可手続経験もある湯活のススメ管理人が、入浴家(ニューヨーカー)の立場も踏まえて由緒正しい入浴法についてお送りしてみたいと思います。

※コチラは温泉ソムリエ分析書マスター取得時のレポート↓

yukatsu.hatenablog.com

1.地球の恵み温泉パワーの見直し

環境省において「新・湯治」と題し、日本の固有資産でもある「温泉」について、温泉地での滞在の在り方や温泉地の活性化を見直す取り組みが始まりました。

www.env.go.jp

また医学の世界でも、古来よりの湯治、温泉の効果が再認識され始めています。

医者が教える最強の温泉習慣

医者が教える最強の温泉習慣

 

温泉ソムリエ家元 遠間氏の話によれば、温泉法の定義による成分1,000㎎/ℓの最低限度の単純温泉であっても、入浴剤の3倍程度の成分含有量と効果を秘めているとの事。
更に世界ではHot Spring、Spaという「温泉」を意味する表記があるにも関わらず、日本の「ONSEN」が固有の価値を持つ言葉として認められ始めているそうです。

これらの流れの中で、我々日本人が当たり前のように接している温泉について、そのパワーと入浴法について、以下にまとめてみました。

 

2.日本に齎された天与の恵み温泉パワー

日本は火山国で、その地熱の恩恵で地球からのパワーの恵みが豊富な「温泉」として全国至る所に沸いています。

www.onsen-r.co.jp日本の温泉データによると、現在の日本の温泉地と呼ばれるエリアは2,983か所。世界2位はイタリアで約200か所との事ですから、これはダントツと言えると思います。更に温泉地を支える源泉本数は27,297本。その湧出量総計は2,546,813ℓ/分。ドラム缶換算で毎分12,734本分の温泉がここ日本に湧き出ている計算です。
温泉法の定義によると、主な泉質は大別すると10種類あり、日本にはその全てが揃っています。また、温泉地(エリア)によっては、1か所で7種も8種も泉質の異なる温泉が湧く場所もあり、日本は正に世界一のそれもずば抜けた温泉天国と言えます。
世界も注目するこの地球パワーを活用しない手はありません。
その温泉を提供する施設は全国で20,795軒。「湯活のススメ」管理人は、この施設の支配人経験もあり、その立場から、温泉提供サイド・入浴サイド双方から見た由緒正しい温泉入浴法を探っていきたいと思います。

 

3.温泉利用許可、公衆浴場許可申請について

まずは由緒正しい入浴法に先立ち、皆さんが普段入っている温泉がどのような過程を経て提供されているかという事についてご紹介しておきたいと思います
温泉旅館やリゾートホテルは、旅館業法に則り保健所の営業許可を取得します。
また、銭湯、スーパー銭湯、日帰り温泉他、旅館やホテルも日帰り温泉の入浴客を受け入れる場合は、別に都道府県知事又は保健所設置市(区)長の営業許可が必要となります。これは公衆の安全衛生を確保する為です。
また、温泉には温泉法があり、源泉を保護し、既得権者の利益を守る為、様々な制限があり、これをクリアしないと温泉を提供することは出来ません。

 ①温泉掘削許可

まず、自家源泉を掘る場合、温泉掘削許可が必要ですが、これは環境省が温泉資源の保護に関するガイドラインを定めており、過去において源泉が枯渇したり、温度や成分が著しく低下したりした地区においては、既存源泉と一定の距離規制や揚湯量制限を設ける為で、地区によっては原則新規源泉の掘削許可は下りないエリアもあります(湯河原等)。また、そういう保護エリアでは、既存源泉といえども一旦廃止してしまうと、再揚湯不可となって、未来永劫再利用不可になる事もあります。
日本は火山国で温泉が豊富、掘れば出ると言われておりますが、源泉を開発する、維持するというのは大変大きな投資*1とそれなりの許認可が必要という事で、現在は一入浴客に過ぎない「湯活のススメ」管理人としても、入浴客側は、それを踏まえてありがたく入湯して頂きたいと願っております。

 ②動力装置設置許可

ちょっと掘れば温泉がドバドバ湧きだすのであれば、特に温泉を汲み上げるポンプ等不要ですが、そんな温泉でしたら、市街地であれば、これまでの歴史・開発の過程でとっくに湧出していますので、最近の温泉開発では大深度(地下数百~2,000m)掘削するケースがほとんどです。そうなると、源泉井で温泉源を掘りあてても、温泉は自然に地表まで上がってくることはないので、どうしたって揚湯ポンプを設置し、エアコンプレッサーで揚湯*2することになります。温泉は空気に触れると酸化しますから、本来は自然湧出にこしたことはないのですが、沸いてこないのでは、動力揚湯も致し方なしです。この動力機器の設置にも保健所を通じて都道府県知事の許可が必要です。
これを踏まえて入浴客は、自噴泉*3であれば、貴重であると認識して有難く、動力揚湯であれば、ここまでの温浴施設の努力に敬意を表して入浴して欲しいと願うばかりであります。

★豆知識★
私はかつて揚湯許可の際、温泉分析書と一緒に飲用許可も同時に取得しようとしましたが、そこが大深度でした為、「動力揚湯の場合は、飲泉許可が下りませんよ」と分析会社の方が教えてくれました。動力揚湯の場合、源泉井に揚湯ポンプを沈める為、どうしても微量な機械油や錆が混じる為だそうです。自然湧出泉はともかく、そもそも許認可制度が出来る以前の施設では、動力揚湯でも飲泉所がある場合がありますが、そちらは経験値で飲泉して体調不良になったケースが無い為、施設も勧めており、保健所もこれまでの歴史と経験値に免じて黙認している状況です。詰まり正式に飲泉許可を取った飲泉所も、そうでない飲泉所も、温泉を飲める施設というのは、実は超貴重だったりします。もし見つけたら有難く頂きましょう。但し!成分が強い場合も多い為、せいぜいコップ1杯程度にしておきましょう。

 ③温泉揚湯許可

さて、源泉井も掘り、温泉源も当てて、温泉を組む為の動力も設置し、いざ温泉を汲み上げるにも許可が必要です。これは、地域の源泉保護の為、1分間当たりの揚湯量、温度を測り、この井戸を使用して良いかどうか、どの程度の利用を認めるか判断する為に保険所が立ち合いをして源泉井の状況を把握する為です。
後述しますが、この時に温泉分析出来る機関を呼んで、温泉分析書の作成を依頼する事が一般的ではないかと思います。

 ④温泉供給契約

温泉揚湯の結果、無事温泉は出る事となりました。自家源泉であれば、これで温泉を使用する事が出来ますが、保護源泉地区で源泉井の新規掘削が出来ない場合や、そもそもリゾート地で開発会社が共同源泉を押さえている場合は、既設の源泉井の所有者から温泉供給契約を取り付ける必要があります。
ここまでの大変な投資と苦労の末に確保した源泉ですから、当然水道代よりかなり高額なのが通例です。その高額な源泉を買ってまで入浴客に振舞いたいという言葉にならない熱意とド根性で温泉を入浴客に提供する温浴施設には、とても足を向けて寝られません。しかし、そういう施設が日本のあちこちにありますから、最早どちらに足を向けたら良いか考えると寝不足になる程です。
そういった次第で、自家源泉の揚湯許可か既存源泉の供給契約が無ければ、そもそも温泉提供出来ず、⑦の温泉に関する営業許可や公衆浴場許可は下りません><

 ⑤消防検査

さて、温泉は提供出来る環境が整いました。次は温泉提供施設の許可が必要です。そもそも温泉や銭湯を営業する施設には火を扱うボイラーがあり、建造物には木の柱や畳等の可燃物もあるかも知れません。また火災報知機や消火器等、必要最低限の消防設備の設置も必要となります。(それらの為の設備設置届や使用開始届もありますが、ここでは割愛します)不特定多数が出入りする施設では、消防署の検査を経て検査済証の発行が無ければ、施設を使用し、お客様を招き入れる事は出来ません。この消防検査が下りているのが営業許可の一つの条件となっている為、消防検査抜きでは旅館業法の営業許可も公衆浴場営業許可もそもそも下りないのです。

 ⑥ガスセパレーターの設置

源泉の中には、硫黄泉のような一酸化炭素を含む成分や、可燃性ガスを含む成分のお湯が湧出する場合があります。お湯自体は素晴らしいのですが、取り扱いを一歩間違うと、一酸化炭素中毒やガス爆発のリスクがあり、その場合は、ガスセパレーターと換気設備が必須となっており、この設備の設置も旅館業法の営業許可及び公衆浴場営業許可の一つの条件となっています。

 ⑦旅館業法の営業許可、公衆浴場営業許可

いや~ここまで随分掛かりましたね。このような大変な投資と苦労の末に旅館業法上の営業許可や公衆浴場営業の許可が下りるんですね。湯活のススメ管理人も、当時行政書士委託無しで全て手続しましたので、最初は勝手が分からず右往左往、途中営業許可が下りないのではないかと随分冷や汗をかいた想い出があります。もう入浴の際は、一礼、いえ、二礼二拍手一礼位して入らないといけないですね。

 

4.温泉の提供方法について

 ①源泉掛け流し

源泉をそのまま湯船に注いでドバドバ掛け流しているのが、源泉掛け流しです。生源泉、地球の恵みそのままを味わえるのですから、この上ない贅沢です。一般的には浴槽の横に湯口があり、そこから源泉が投入されています。その場合は、湯口の近くが一番新鮮な源泉と言えますが、湯温が熱い場合、湯が外気で冷めるのとのバランスで湯量を調整しながら浴槽に注いでいるケースもあり、その場合、湯口に近づきすぎると熱くて火傷するので注意が必要です。
なかには足元湧出といって、足元から自然に温泉が湧出する上に湯船が設置されているケース(足元湧出泉といいます)もあり、この場合、温泉が空気に触れずに浴槽に注がれている為、ほとんど酸化していない究極の生源泉といえます。
※コチラは足元湧出泉で有名な群馬県の法師温泉↓

www.hoshi-onsen.com

 ②加水

源泉温度が50℃を超えて高い場合、何らかの措置で湯温を下げないと現実的にはこのまま入浴出来ません。このような場合、加水して温度調節をするのが一般的です。
古来からある温泉地の中には、加水によらず出来るだけ源泉のままを味わってもらいたいという事で、湯雨竹(別府)や湯畑(草津)、湯もみ(草津)のような手法を使い、湯を外気との熱交換で冷ます事で、出来る限り生源泉に近い方法で提供するケースもありますが、そもそも別府や草津ほど湧出量が多くないと、入浴客に対して源泉の投入量が足らず、やむなく加水するケースもあります。

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湯雨竹(別府「ひょうたん温泉」)

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湯畑(草津温泉)

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湯もみ(草津「熱乃湯」)

 ③加温

源泉の温泉成分は豊富ですが、温度が25℃未満の場合は、冷鉱泉と呼ばれます。この場合、そのままではかなり冷たいので、加温が必要となります。先の加水の場合もそうですが、源泉投入量が足らず加水する場合も、加温が必要になる場合があります。
中には、冷鉱泉をそのまま掛け流す水風呂や、源泉をそのまま提供する施設もありますので、機会がありましたら、チャレンジしてみてください。

※コチラは13℃という驚異の冷鉱泉「寒の地獄温泉」です↓

kannojigoku.jp

 ④循環

そもそも源泉量が足らない場合は、源泉保護の観点から掛け捨てる訳にはいかず、また高温源泉でなく加温が必要な場合は、省エネ光熱費節減の観点から沸かしたお湯を掛け捨てず、循環させることが必要になるケースがあります。これも源泉保護や施設の維持、入湯料金の抑制の為の苦肉の措置と言えます。

 ⑤消毒

これは保健所の指導によるもので、源泉掛け流しで常に新鮮なお湯が規定量以上投入出来ている場合は不要ですが、そうでない場合は、浴槽の中に古いお湯が滞留するケースがあり、この場合は、保健所の指導で必ず消毒が必要(循環の場合は100%消毒がセットで付いてきます)です。消毒には一般的に次亜塩素酸系の消毒剤が使用され、遊離残留塩素濃度で1ℓ当たり0.1㎎以上となっています。良く「塩素臭い」等という場合がありますが、この場合は消毒剤の投入量が過剰で最低基準値の数倍消毒剤が投入されているケースかと思います(0.1~0.2㎎/ℓではまず塩素臭はしません)。しかしながら、消毒が適正に行われないケースでは、レジオネラ肺炎の発症等のリスクも高まりますので、消毒にも費用と手間が掛かりますが、入浴客保護の観点では絶対必要な措置と言えます。

 ⑥まとめ

上記により、源泉の提供方法は、①の源泉掛け流しから②~⑤の加水・加温・循環・消毒の施設まであるということになりますね。
そもそも源泉掛け流し、中でも足元湧出泉等は、たまたまそこに沸いていたから出来た奇跡のような温泉であり、お百度参りしてから沐浴*4で世俗の汚れを落として、拝みながら入湯する位有難い温泉と言えます(実際はゆったり寛いでご入浴ください)。仮に加水・加温・循環・消毒であった場合も、希少な源泉を多くの入浴客に豊富に届ける為の知恵と資金と手間を投資して提供されている事を考えると、施設に感謝しながら湯を頂いて欲しいと思います。

 

5.温泉の維持・メンテナンス

 ①温泉分析書

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今年5月末惜しまれながら閉湯した浅草の温泉銭湯「蛇骨湯」の温泉分析書

温泉のある旅館やホテル、公衆浴場営業許可を受けた温泉施設は、源泉の様々な泉質、その成分や適応症、禁忌症*5、更には泉源地の場所、泉温、湧出量や検査分析機関まで掲載した温泉分析書を10年ごとに作成し、そのあらましを入浴客の見やすい位置に掲示する事が義務付けられています。

※環境省の指定した温泉表示項目の指針

https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/pamph_kaisei_jigyo.pdf

温泉は自然の恵みですので、10年ごとに湧出量や成分が若干変わるケースがあり、場合によっては泉質名そのものが変わるケースもあります。

 ②温泉施設の維持管理

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写真は赤沢温泉郷の源泉櫓(やぐら)です。温泉地でよく見る風景ですが、この櫓は源泉井の揚湯管を定期的に引き上げて交換する為に立てられます。定期的な揚湯管交換は、源泉成分が濃ければ濃いほど、スケールといって析出物がパイプ内に付着し管が詰まりますし、酸化が進んで錆びたり折れたりするリスクがある為必要なもので、その度にクレーン車を呼ぶのは費用面でも現実的では無い為、源泉井には櫓を立てるのが一般的です。温泉は掘るだけでなく、維持管理も大変んですね。

 

6.由緒正しい温泉提供・入浴について

さて、上記を踏まえ、施設側への温泉提供についてのお願い、並びに由緒正しい入浴法について以下のようにまとめてみました。

 ①施設側への温泉提供についてのお願い

・安全第一!特にガスセパレーターとレジオネラ対策は万全に!
・常に清潔を心掛け、安心して入浴できる環境づくりを!
・施設の置かれた環境・予算の許す範囲で出来る限り良い状態で温泉を提供
・温泉の魅力を分かりやすく入浴客にアピールし、理解してもらうこと
・貴重な源泉を後世に継ぐべく、施設の永続運営をお願いしたい

 ②由緒正しい温泉入浴法

  1. まず温泉分析書や温泉の掲示を見て、泉質や適応症、禁忌症を確認。
  2. 沐浴で世俗の汚れとおさらばします。
  3. 掛け湯(湯温や泉質に慣れる為、数杯は行いましょう)。
  4. 湯を乱さないように足元からそろそろと入浴する
  5. 湯口や湧出口等、新鮮なお湯の出元を探り、そっと近づく。
    ※お湯の投入量で泉温を調節しているケースもある為、湯温に注意!
  6. 湯温や泉質、その日の体調と相談しながら、決して無理をしない。
    ※源泉掛け流しや成分の濃い温泉、泉温の高い温泉は湯あたりするので、短時間、回数を分けて。
     
    単純温泉や成分の薄い温泉、ぬる目の温泉は、体調と相談しながらゆっくりと。
  7. 湯上り後のケアは以下の通り。
    ・強い酸性泉~軽くシャワーや上がり湯で流してから上がる。
    ※蒸発すると成分が濃縮され湯ただれを起こす可能性がある為
    ・強アルカリ泉~湯上り後、化粧水や乳液で保湿する。
    ※美肌の湯ですが、表面の古い角質を溶かして落とす為、湯上り後は乾燥しがち
    ・その他の泉質~水や湯で洗い流さず、軽く押さえて水気を拭いて上がる。
    ※温泉成分のヴェールが皮膚を覆い、湯上り後も温泉成分を取り込む為
  8. 転地効果で気分も一新。出来ればその土地を散策し、地の物を食す。
  9. 時間と懐にゆとりがあれば、数日湯治で温泉地湯巡りにより効果倍増。
  10. 地球の恵み温泉と、温泉を提供してくれる施設に感謝の気持ちを忘れない。

 

皆様も由緒正しい温泉入浴法で楽しい温泉ライフをお過ごしください

*1:温泉井の掘削には10mにつき約100万円掛かると言われており、1,000mとなると掘削だけで約1億円掛かると言われています

*2:水鉄砲と同じ原理ですね。コンプレッサーで源泉井に空気を送って、その圧力で温泉を汲み上げます

*3:自然に湧出する温泉

*4:洗髪や洗体で洗い清める事。禊。

*5:温泉の利用に適さない症状や体質