湯活のススメ

温泉・銭湯・サウナ・岩盤浴等の温浴施設の楽しみ方

銭湯の今日的意義を考える

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各家庭に家風呂が普及する中、銭湯の減少が言われて久しいですが、2020年3月期は、私が知る限り都内だけでも6軒の銭湯が閉店を決め、全国ではもっと多くの銭湯がこの1カ月間だけでも閉店しています。社会的にも色々と難しい情勢があったりと取り巻く環境は厳しいものがありますが、こんな時だからこそ、銭湯の今日的意義を見つめ直してみたいと思います。

1.公衆浴場の変遷

 ①公衆浴場を取り巻く背景

有史来の入浴史については別に委ねるとして、まず、そもそも公衆浴場とは何なのか、ここでは公衆浴場法(昭和23年7月12日法律第139号)以来の戦後公衆浴場の変遷に的を絞って、現状認識から振り返ってみたいと思います。
公衆浴場法では、不特定多数の入浴客にサービスを提供するに当たり、公衆衛生、風紀上の観点から公衆浴場営業許可を得てサービスを提供するように義務付けています。これは旅館業・ホテル業等も含め日帰り入浴を受け付ける場合は、遍く該当する決まりとなっています。
その中でも銭湯は一般公衆浴場と呼ばれ、戦後のインフレ対策として最低限の生活保証の為に設けられた物価統制令の流れで、米や工業用アルコール等と並んで価格を統一する規制対象とされて来ました。時代は各家庭にまだまだ風呂が常備されてなかった頃の話です。その後経済の安定と同時に、規制対象品は徐々に少なくなり、2002年以降、物価統制令の規制を受けるのは今では銭湯のみとなっています。
一般公衆浴場では、物価統制令の価格統制を受ける代わりに国からは固定資産税の減免、都道府県からは下水道代の減免、市区町村からは各種キャンペーン等の手厚い保護を受ける事が出来ます。

 ②銭湯軒数の推移

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厚生労働省の資料によれば、公衆浴場全体の軒数は温浴施設の微増やスポーツクラブの隆盛等を反映して横ばいが続いていますが、一般公衆浴場としての銭湯は年々減少し、ピーク時(昭和40年頃)23,000軒あったと言われていましたが、今ではその5分の1にシュリンクしています。これは首都東京都下においても同様で、ピーク時2,600軒(昭和40年頃)あったものが、統計上は544軒となっていますが、今日時点で追加の廃業、長期休業(復活の見通しの立たない物)を含むと既に500軒を割り込んでいると言われています。

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手厚い保護のある東京都下でさえ、この状況ですので、地方の市区町村では既に銭湯空白地区も多数存在し、業界としての存続が揺らぎ始めています。これまでの閉店銭湯に伺ったところでは、主な原因は保護を上回る大きな売上減少、跡継ぎ・相続問題、耐震・設備改修等の再投資の困難等が背景にあるようです。

 

2.銭湯の今日的意義

そもそも物価統制令の時代は、各家庭に風呂が無いのが前提でしたから、今日の銭湯はあえて家風呂ではなく出掛ける意義が無ければ、業界としての隆盛は難しいところかと存じます。その上で銭湯には他の温浴施設や家風呂にはない魅力があり、それを銭湯の今日的意義としてまとめてみたいと思います。

①温熱効果・・・広い湯船で一定時間少し熱めの湯に肩まで浸かる事で、ヒートショックプロテイン(熱ショックたんぱく質)が鍛えられ、免疫力が向上する。
②静水圧効果・・・広くて深さのある浴槽に浸かる事で、全身圧迫され、末端から血流が心臓へ押し戻される過程でむくみの解消に繋がる
③抵抗効果・・・家風呂と異なる大きな浴槽では手足を伸ばしてリラックスすると同時に、水中抵抗で手足を動かすと緩やかな負荷により、運動並びに特に高齢者の関節痛緩和に繋がる
④マイナスイオン効果・・・大量の湯を沸かす事で湯煙が浴室内に充満し、高湿度の環境で呼吸器系を潤し、ウイルスの滅菌効果向上
⑤デジタルデトックス効果・・・浴室内ではスマホやPC持込負荷で触れない為、必然的にデジタルデトックスに繋がり、解放感から心身共にリラクゼーション効果が高い
⑥入浴事故防止・・・入浴時の事故は、特に冬場、寒暖差によるヒートショックに起因する心筋梗塞等によるものが多いが、銭湯は各家庭に比べ、脱衣場より空調でヒートショックが起きづらい環境が整備されており、また周囲に人がいる事で、万が一事故時の早期発見に繋がる為、致命的事故防止になる
⑦日常の中の非日常体験・・・フラッと行ける非日常体験、建築芸術、広くて開放的な空間、手足を伸ばせる広くて深さのある浴槽、自宅とは違った空間でリラックスタイム

⑧圧倒的なコストパフォーマンス・・・ワンコインで上記を全て堪能出来るのが、スーパー銭湯や温泉宿とは異なる銭湯のワンダフルな所!

そして、元々一般公衆浴場に求められていた役割、現在でも物価統制令の統制下にある意味も考えなければなりません。それは、今日でも風呂無しアパートに在住している方がいらっしゃり、一般公衆浴場は公衆衛生に資する意味で、様々な局面においても開かれている必要性が求められているという事を忘れてはならないという事です。
但し、個々の銭湯によって事情は異なり、例えばビル型銭湯でマンションを併設している場合、マンション組合の理事会や総会決議で休業を要請された場合等、どちらを優先するか個別事情によって判断しなければならないケースがあるという事です。そういう特殊事例を除き、銭湯に設備不良による休業や存続困難による自主的な休業・廃業はあったとしても、対外的な理由による休業がほとんど無いのはそういう事由によるものです。ではそのインフラをどう支えるかという事も考える必要があります。

 

3.銭湯を見直す動き

最近では、若者を中心として、美術面から銭湯のレトロ建築やデザイナーズ銭湯を見直す動きや、マンガやドラマの影響によるサウナブーム等も有り、これが銭湯文化再興に繋がる一助となる可能性があるのではないかと考えます。

・各大学のお風呂部やサウナ部設立新設数も多く男女問わずかなり入部者があるようです
・銭湯空間今井健太郎建築設計事務所によるデザイナーズ銭湯の動き

銭湯空間

銭湯空間

 

・銭湯再興プロジェクト1.0塩谷歩波さん「銭湯図解」、情熱大陸、各種イベント実施


銭湯図解 - わたしが銭湯を好きになったきっかけ - ゲスト:イラストレーター・番頭 塩谷歩波

・銭湯再興PJ2.0~若手中心に50~60名による銭湯再興を目指す動き

・各銭湯組合での銭湯大使任命以下、私の知る限りですが、まだまだいらっしゃるかと。
 *東京都浴場組合ステファニー・コロインさん、木村悠さん

www.1010.or.jp

 *千葉県浴場組合大使:後藤泰彦さん、副大使:森真理子さん、PR特命大使:汐川ほたてさん

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 *新潟県浴場組合ジャックポット

niigata268.com

 *日本銭湯文化協会古部賢一さん、他にこども銭湯大使4名

  http://www.sento.or.jp/ambassador/

 

4.銭湯体験のススメ

 ①銭湯習慣を始めよう!

銭湯の今日的意義を享受する為にも、まずは月に1回でも(本来の効果を求めるのであれば、最低週2回・・・ヒートショックプロテインは、正しい入浴後、2~3日効果が持続する為)銭湯に足を運んでみましょう。普段行った事の無い人は、必ず銭湯の良さに気付くポイントがあると思います。そうしたら、定期的に通う事で、それを習慣化してみましょう。きっと銭湯の今日的意義を知識ではなく、体感として実感出来る筈です。

 ②ご褒美銭湯を探してみよう!

登録指定文化財の認定を受けるようなレトロ銭湯建築から、新進気鋭のグラフィックアートが散りばめられたデザイナーズ銭湯、広くて深い湯船、ジェットバス、電気風呂、座湯、寝湯、バイブラバス、うたせ湯、歩行浴、シルクバス、薬湯、高濃度炭酸泉、ラドン浴、温泉銭湯、サウナ、水風呂、外気浴スペース・・・見た目も設備も様々ですが、家風呂には無い魅力が、銭湯には凝縮して詰まっています。温泉地やスーパー銭湯は、移動や滞在に一日掛かりの事が多いですが、銭湯なら思い立ったらすぐアクセス可能です。出勤や通学前の朝湯、デートや買い物帰りの立ち寄り湯、出先で見つけてフラっと寄るのも自由です。是非、自分好みの1軒を見つけてみてください。

yukatsu.hatenablog.com

 ③ご実家銭湯を持とう!

家風呂がある今日、ご褒美銭湯を見つける事は、銭湯の今日的意義に繋がると思ってますが、もう1つ、自宅や会社、学校の近くにご実家銭湯を1軒持つ事をお薦めします。これはいつでもすぐ行けるという利便性もそうですが、万が一の災害で水道が止まった時でも、井戸水や自家源泉を持つ銭湯は水が出ます。ガスの供給が止まっても薪沸かしの銭湯ならお風呂が沸かせます。脱衣所や広い待合ロビーも有り、銭湯は、地域の避難ステーションになれる可能性を大いに秘めています。これは、震災時に関わらず、自宅のお風呂が故障した時も同様の恩恵に被れる訳です。
そんな銭湯が自宅や会社、学校近くに1軒も無くなってしまったらどうでしょう。
今までそんな事考えた事ないけど、いざとなったら困るな~と思いませんか?
実は最近では銭湯お遍路やスタンプラリーで景品を配布したり、銭湯振興策を業界でも試行錯誤しているのですが、実は風呂ナシ時代同様、皆が自宅近くの銭湯に足しげく通えば、1軒の銭湯も無くならなくて済むのです。今でもマイホーム銭湯と言って、1軒の銭湯に通い詰める方もいらっしゃいますが、家風呂のある中、全員にマイホーム銭湯を決めて毎日行けとは言えません。しかし、ご褒美銭湯巡り等も行いながらで構いませんので、無くなったら困るインフラとしての銭湯には、月に1回でも顔を出しておきたいものです。かくいう私も、銭湯お遍路等で、自宅近くの銭湯に月1回行けていない事もあるのですが、マイホーム銭湯とまではいかなくても、ご実家銭湯であれば今日でも1軒位持っておく意義があるのではないでしょうか?
※ちなみにコチラはマイホーム銭湯❝高濃度炭酸泉の聖地❞「川場湯」のレポートです↓

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以上、最近の銭湯業界の流れを受けて、銭湯の今日的意義を考えてみたの巻でした。まだまだ薄学浅慮の点もあり、経験も人より十分とは言えませんが、多少なりとも参照になる点があり、銭湯にも足を向けてみようかなと思って頂ければ幸いに存じます。