湯活のススメ

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閉店のお知らせ|岩の湯|ときわ台|週末銭湯散歩①銭湯業界の神髄に触れる|湯活レポート(銭湯編)vol.120

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【所在地】東京都板橋区常盤台1-34-10

Google マップ

【入浴日】2019/11/10
【閉店日】2024/3/31

1.岩の湯入湯

この日は週末のご近所銭湯散歩でときわ台の銭湯湯巡りです。
1湯目は「岩の湯」さんへお邪魔しました。
岩の湯さんへは、東武東上線ときわ台駅北口ロータリーから右斜め前の路地を真っ直ぐ進みます。

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途中、右手に区立常盤台小学校、板橋区立中央図書館、常盤台公園をみながら通過。

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常盤台公園を過ぎた先を右折し、少し進んだ先、駅から徒歩8分程で岩の湯さんへ到着します。

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住宅街のど真ん中ですので、ともすれば見落としてしまいそうになります。
私も癖で煙突を探していて気付いた次第です。
玄関の中の三角の置き行灯でここが岩の湯さんだと分かります。

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本日2湯目がある為、受付を済ませ、早速浴室へ参ります。
正面に男女浴室に跨る雄大な黄金富士のペンキ絵が入浴客を出迎えます。

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こちらの洗面桶は最近では珍しい白ケロリン。
いつも通り沐浴を済ませ、早速湯巡りへ♨

 

岩の湯さんの浴槽はシンプルです。

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向かって右手にジェット付き座風呂、中央が縦2連のスーパージェット付きメイン浴槽、右手が変わっていて若干スロープになった寝風呂風のスペースです。
お湯は江戸前の熱湯で45℃。しかしながら不思議とピリピリ痺れる感じはせず、湯触りが柔らかいので、慣れるとリラックスして浸かっていられる感じです。
私は右手からジェットで体をほぐし、仕上げは左手のスロープの寝風呂で横になって黄金富士を眺めながらしっかり体の芯まで温まり、シャワーで流して上がりました。

 

2.ご主人とのお話

湯上り後、ご主人に話を伺う事が出来ました。

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黄金富士が余りに見事で綺麗なので、最近描かれたものなのかお伺いすると、「最近じゃないよ。いつだと思う?」との意外なお答え。通常は2~3年で描き変えられる事が多いと伺っていましたので、4~5年ですか?とお伺いすると、「そう4年前。何でだと思う?」とまたご質問。
この後、何度か質疑が続くのですが、要約すると以下のようなお話を伺いました。

・ペンキ絵が長持ちするのは、塩素を極力最低限しか使わないから。
・岩の湯では天然井戸水を薪沸かしで通常の数倍時間と燃料費を掛けて、1℃ずつ60℃までじっくりお湯を温めて滅菌するので、塩素は最低限でも大丈夫*1
・だから熱湯でもピリピリせず、湯上り後も湯冷めしにくい。
・今年まで20年間に渡り、歴代の銭湯組合のタオルを飾っていたが、止めた。
 ※貴重な20年分の銭湯組合のタオルの写真を見せて頂きました。
・白ケロリン桶は30年来使用しており、20年前には生産中止になった為、今では貴重で珍しいものとなった。
・今でも白ケロリン桶を使えるのは、ゴシゴシ磨かず、倍の桶を用意し、日替りで漬け置き洗いし、水で流すだけだから。擦るとそこから垢が入り、更に擦って痛む為。
・鏡も通常は5~10年で白くなってくるが、磨き方のコツがあって、きちんと磨くと30年以上使ってもピカピカ。
・銭湯は物価統制令の名残で都道府県が料金を決めている。戦後は衛生面で銭湯とその他に米と塩が物価統制令の対象であった。
・低廉な料金で統制される代わりに国からは固定資産税の減免措置が、都道府県からは下水道代の減免措置が、市区町村からはキャンペーン等の販促費が補助される。
・それでも単価が安いのと、営業時間が長く、働き方改革と無縁の大変な稼業なので、後継ぎがいないというより、後を継がせたくないケースも多く廃業続き。

銭湯検定にも出て来ないような、永年現場に携わったからこそ出て来る名言の数々に圧倒され、20~30分もお話を伺っていたでしょうか?最後にご主人が、「こうやって20~30分話してるけど、湯冷めしないでしょ?」と声を掛けられ、確かにと納得。
名残は尽きませんでしたが、「お元気で出来る限り続けてくださいね。また来ます。」とお約束して、岩の湯さんを後にしました。
2湯目の移動中、チャリンコで秋風を浴びながら、これだけの知見が廃業で消えていくのは如何にも惜しく、何とか各銭湯の持つナレッジを結集して、良いムーブメントが起こせないものかとあれこれ考えさせられました。

 

3.閉店のお知らせ

その岩の湯さんですが、2023/9/25頃より休業と営業再開を繰り返していらっしゃいましたが、2024年3月末日で閉店を決められたようです。

当初板橋区浴場組合のHPでは閉店日までは営業と記載してありましたが、その後紆余曲折があったようで、営業再開する事無く、このまま閉店を迎えられるようです。

※浴室内は撮影不可の為、店舗紹介ページより拝借しております。
※コチラは週末銭湯はしご2湯目のアクアセゾンさんのレポートです↓

yukatsu.hatenablog.com

*1:これは恐らく、「過熱」という現象。ゆっくり時間を掛けて温めると100℃を超えても沸騰せず、液相の状態を保つが衝撃を与えると瞬時に沸騰する(突沸)。逆の現象が冷却時にも起こり、これを過冷却という。詰まり時間を掛けてじっくりお湯を沸かす事で、瞬間湯沸かしで得られない熱量をお湯に保持させ、冷めにくい滅菌効果の持続するお湯を作っているのではないかと思われる。